ビワマス

(サケ科 サケ属)

Oncorhynchus masou rhodurus (Jordan & McGregor, 1925)

ビワマス(琵琶湖流入河川)

準絶滅危惧

ビワマス

オリンパスE-3 12-60(21)/2.8-4 f8 1/180 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 10月 水深50cm

 ビワマスはサツキマス(アマゴ)に近縁な琵琶湖固有亜種です。①成魚では体側の朱点が消失する、②眼が大きい、③吻が丸い、ことでアマゴと区別できるとされています。生態的には、本種は琵琶湖で進化し、塩分耐性を失っているため、サツキマスのように海に降りることはできません。また、サツキマスは春に海から遡上しますが、本種は秋に琵琶湖から遡上する、といった違いがあります。なお、ビワマスにも河川残留型はいるのですが、ほとんどは琵琶湖に降りるようです。

 さて、本亜種は産卵期を迎えると増水時に一斉に川を遡上します。このため、琵琶湖周辺では「アメノウオ」との地方名で呼ばれています。滋賀県漁業調整規則により、県下全域において産卵期に当たる10月1日から11月30日までの採捕は禁止されています。これに加え、指定された保護水面(琵琶湖流入河川の下流など)では9月1日から11月30日まで、ビワマスも含めたすべての水産動物を採ってはならないこととなっています。密漁が多いため近年は警察も巡視を強化しており、積極的に検挙しているとのことです

 広くて深い琵琶湖の中でビワマスを撮影するのは難しいので、秋の遡上期に狙うこととしました。川の中で目視はできるものの、全く近づけません。これはどうしたものか、と途方に暮れていると、突然2匹のビワマスが慌てたように上流から下りてきて、目の前に定位しました。ゆっくり顔を上げて陸をうかがうと、30mほど離れた川の土手に親子連れが歩いていました。おそらくこの人影に驚いてビワマスが物陰から出てきたものと思われます。えらく敏感です。とはいえ、運良く目の前に定位してくれたので、やっと撮影できたのがこの写真です。

ビワマスのつがい(琵琶湖流入河川)

ビワマスのつがい

オリンパスE-3 12-60(16)/2.8-4 f6.7 1/125 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 10月 水深40cmm

 せっかくなら繁殖行動を見たいと思い、ようやく見つけたペアです。降雨から時間が経ってしまっていたので、産卵床は数あれど、ペアを組んでいる状態はなかなか見つからなかったのです。雌が穴掘りをし、雄は寄り添っていました。

 警戒心の強いビワマスではありますが、ペアならそう簡単には逃げないだろう、と広角でじわじわと接近を試みます。案の定、全く逃げる気配がなく、直近まで寄ってフラッシュを焚いても全く動じません。しかし、この場所は落ち込みで泡立っており、泡の晴れた瞬間しかシャッタを切ることができません。粘って雌が尾びれで穴を掘るところを撮影しました。雌の穴掘りは休み休み行われるため、産卵床を掘るには当分時間がかかると思われます。

ビワマスの雌(琵琶湖流入河川)

卵を埋め戻そうとするビワマスの雌

オリンパスE-3 12-60(12)/2.8-4 f6.7 1/60 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 11月 水深60cm

 産卵床に雌らしい個体が1匹のみいます。この雌は近づくと逃げるのですが、しばらくすると必ず元の場所に戻ってきて、尾びれで礫を掘っています。最初は産卵床を作っているかと思ったのですが、雄の姿がありません。ペアリングを期待して待つのですが、雄は来ません。

 しばらくして気がついたのですが、この雌は産卵後に卵を埋めている個体であって、それ故1匹しかいなかったのです。そういえば腹も凹んでいますし、顔をはじめ体の各所が水棲菌に冒されています。免疫力が落ちているのでしょう。

 あまり近づくと逃げてしまいますが、離れるとすぐ戻ってきます。埋め戻す時はいったん前進して体を横にし、数回尾びれで川底を叩きます。しかし体力が落ちており、埋め戻そうと体を横にすることすらままなりません。埋め戻しはかなり終わっているようで、最後の力を振り絞っているようでした。

死を待つビワマス(琵琶湖流入河川)

死を待つビワマス

オリンパスE-3 12-60(12)/2.8-4 f6.7 1/125 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 11月 水深20cm

 産卵を終えた雌が、流れで定位していました。もはや逃げる気力もないのか、近づいても動じません。

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