ミナミスナガニ

(スナガニ科 スナガニ属)

Ocypode cordimanus Latrerille, 1818

ミナミスナガニ(西表島)

ミナミスナガニ

オリンパスE-3 ZD12-60/2.8-4 f6.7 1/30 T28マクロツインフラッシュ(GN9)

西表島 5月 干潟

  昭和48年に出版された『沖縄の貝・カニ・エビ』(仲宗根・諸喜田 風土記社)という大変素晴らしい図鑑があります。オールカラーで、エビ、カニについては当時としては珍しく生きた個体の写真が使われています。解説も興味深く、ヤクジャマガニ(現在はクマドリオウギガニとされていることが多い)の和名に関する異議が提起されているなど読み応えがあります。

 この中で、私がひときわ興味を惹かれたのは、ツノメガニが「夜間は色素の沈着で真っ白になり、影もなく非常に素早く走るので、外国では「幽霊ガニ」(Ghost Crab)と呼ばれている。」「1845年頃、宮古島ではこのカニを採って食べていたらしい。」と紹介されていたことです。日中のツノメガニはそこそこ見ていますが(とはいえ基本的に夜行性なので、あまり活動的ではありませんが)、真夜中に真っ白になった状態を見てやろうと夜の干潟に繰り出しました。

 ツノメガニは眼に突起があるのが特徴ですが、ぱっと見では甲に「( )」のような臙脂色の模様があることが特徴です。また、腹側も口の周りが臙脂色です。これらが消えて真っ白になっているのかと思い、ツノメガニを見て歩くのですが、どうも昼間とさして違いがあるように思えません。

 一方、同所的に見られるミナミスナガニ(むしろこっちの方が多い)が真っ白になり、非常に素早く逃げていきます。本種は昼間は目が黒く、体も幾分茶色がかっていますが、夜は真っ白です。近づくと、猛烈な勢いで逃げます。巣穴に入るものもいますが、海に逃げるものも多く、後者の場合、波打ち際でいったん止まりますが、さらに接近すると海に入ってしまいます。ツノメガニも逃げますが、ミナミスナガニほど素早くはありません。

 帰ってからあらためて調べてみると、「Ghost Crab」というのはスナガニ属の総称のようです。日本では代表選手はツノメガニより、むしろミナミスナガニの方でしょう。

 さて、本種は高潮線付近に棲み、夜になると巣穴から出てきて、流れ着いた漂着物を食べています。摂餌している個体はなかなか逃げませんが、接近するとはさみの動きは止まるので、警戒はしているようです。光を当て続けるとすくんで動かない性質があるようで、撮影しようと思えば光を逸らさないようにしなければいけません。逸らすと走り出してしまいます(早い!)。

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