ミヤコタナゴ

(コイ科 アブラボテ属)

Tanakia tanago (Tanaka, 1909)

ミヤコタナゴ雄(那珂川)

絶滅危惧IA 天然記念物

ミヤコタナゴの雄

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f6.7 1/45 Z-240×2(TTL)

那珂川 4月 水深50cm

 種小名に「タナゴ」を冠した本種は、かつては都心にも棲息していましたが、開発により生息地を奪われ、現在では千葉県と栃木県にわずかに残存するのみとなっています。昭和49年には魚類としては最初の天然記念物にも指定され、手厚く保護されてきました。それでも現在、野生絶滅が最も危惧される魚の一つです。

 本種は基本的に湧水を水源とする最上流部に棲息するとされていますが、ため池に棲息することもあるようです。

 本種は警戒心が強く、水深の深いところや物陰に集まっています。開けた浅い水面は猛烈な早さで泳ぎ渡ります。また、直射日光を嫌い、日光が射すと集団で物陰に移動します。フナ類同様、1匹が逃げると、群れ全体が逃げるため、かなり撮影が難しい被写体です。

 特に写真のような若い個体は俊敏でよく泳ぐため、撮影は簡単ではありません。貝覗きのため二枚貝のそばに現れたヒレ全開の瞬間を狙いました

ミヤコタナゴ貝覗き(那珂川)

貝覗きをするミヤコタナゴの若い雄

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f6.7 1/45 Z-240×2(TTL)

那珂川 4月 水深50cm

 いわゆる「貝覗き」をしている若い雄です。この下にはドブガイ(タガイ型)がいます。ドブガイは完全に軟泥底に潜入しており、5cmほどの窪みの奥に二つの「貝の目」がある状態です。

 このドブガイには若い雄個体の1匹(3cmにも満たない小型個体)が関心を示し始めました。この個体は、老化個体と群れを作っていましたが、群れから離れて単独で貝覗きに来ました。これにつられたのか、他の雄個体や若い雌も加わるようになりました。泥に頭を突っ込む個体もいました。老化個体はほとんど関心を示しません。

 本種はは雌雄ともに縄張りを形成しないと繁殖に至らないとされているので、観察を続けたのですが、縄張り形成を確認するには至らず、時間切れとなってしまいました。

 ミヤコタナゴは日光を嫌いますし、フラッシュを焚くと逃げますが、貝覗きの際はあまり気にしないようで、かなり接近することもできます

ミヤコタナゴ老成雄(那珂川)

ミヤコタナゴの老成雄

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/60 Z-240×2(TTL)

那珂川 3月 水深50cm

 全長6cmほどの老成魚です。3月に入る頃には、雄は写真のような婚姻色を発現します。雌の産卵管はまだ伸びきってはいません。大型個体は物陰に隠れる性質がより強くなります。若い個体の輝くような婚姻色とは異なり、熟した感じがあります

ミヤコタナゴ老成魚群

若い個体を防御するミヤコタナゴの老成魚

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f6.7 1/90 Z-240×2(TTL)

那珂川 4月 水深50cm

 これから1月も経つと、老成魚はすべて老化してしまい、見る影もなくなってしまいます。♂♀とも体色は青灰色となり、生気がなくなります。雄はすべて背びれが溶け、婚姻色も薄れます。背骨が曲がっている個体も見られます。それでも、この後もしばらくは生き長らえます。

 老化個体が繁殖終了後も生きながらえているのは、群れを作って若い個体を守るという意義があるものと思われます。老化個体は大型なうえ動きが鈍いため、外的から狙われた場合に犠牲になる確率が高いのでしょう。実際に若い個体を取り囲むようにして集団で行動しています。

 写真では、中央に若い雄、画面上部に産卵管の伸びた若い雌が見られます。若い個体は黄色みがかった体色をしています。

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