遊泳性のカワアナゴ類です。
前回この地を訪れたときは、タナゴモドキは発見したものの、本種には出会えなかったため(両種は同所的に棲息するとされています。)、今回は夜間に入ってみることにしました。
撮影地の川は自然度が高い代わりに、夜は真っ暗で、あちこちに倒木があり、いたって不気味です。しかも水没した倒木からは夥しい数の線虫が呼吸できずに出てきて死んでおり、普通の人ならその気味の悪さに音を上げるでしょう。まあ自然とはそんなものです。
そうこうしているうちに、あっさり見つかりました。岸寄りの止水部で、砂底に着底して寝ています。光を当てても動じません。何枚か撮っていると逃げてしまいましたが、遠くへ逃げるわけではなく、近くの茂みに入っただけでした。
いずれにしてもこの場所にいることが分かったので、翌朝、遊泳するのを狙うことにしました。朝は腹が減っているはずだから、遊泳して摂餌するだろう、という読みです。
前日の晩にタメトモハゼを見つけたので、夜明けとともに行ってみました。しかし、見つかりません。本種は警戒心が強いので、じっとしていないと表に出てこないだろう判断し、当分の間静かにタナゴモドキを撮影していました。
ふと横を見ると、タメトモハゼが3匹、群れとなって中層に定位しているのが見えました。急に動くと素早く岸寄りの茂みに隠れ、じっとしているとゆっくりと出てきて再び定位遊泳します。したがって、開けた水面と、隠れ家の多い淵の両方がそろった環境が本種には必要と思われます。
定位は群れで行うこともあれば、単独で行っていることもあります。定位中は、尾ビレを緩やかに振っております。遠目には真ん中に一本の縦線が通っている白っぽい魚に見えます。
同じ場所にオオクチユゴイが多数見られますが、これらは体高が高い上、泳ぎ回るため判別は容易です。
本種特有の生態を描写しようとするなら、定位遊泳しているところを撮影するしかありません。しかし、田口哲さんの「日本の魚-淡水編-」(小学館:1990)には「開けた場所にいる場合は決して接近できない」とあります。
とにかくどこまで接近できるのか、試してみることにしました。ごくごくゆっくりと間合いを詰めていった結果、撮影距離で60cm程度までは寄れました(ポートの先端からは40cmくらい)。50cmまで寄ると逃げます。55cmくらいで撮影したのがこの写真です。
昼頃になると見かけなくなったところを見ると、腹一杯になって茂みに隠れてしまったのかもしれません。定位遊泳は捕食のためと思われるので、捕食を見たかったところですが、濁りでコントラストが低く、確認できませんでした。結局確認したのはこの3匹のみ。やはり希少な種だと実感します。