同定に自信はありませんが、アカエビ属に間違いはなさそうで、斑紋や色彩からしてキシエビが最も該当すると考えています。
本種は泥底に数匹がまとまっており、これまで観察した限りでは、斑紋が赤いもの、えび茶色のもの、薄い褐色のもの、といった色彩変異が見られ、かつ、これらが一つの群れに混在しています。
本種は内湾性で、瀬戸内海ではサルエビやトラエビと並んで漁獲が多い種です。その割には市販されている図鑑類にもほとんど登場せず、同定が難しいエビです。しかし、比較的よく見かけるトラエビやアカエビに対し、一見して「何か違うな」と感じたのも事実です。
エビ類は実際に水中で見た場合と、陸上げした場合とではずいぶん色彩や斑紋が異なることがあります。例えばサルエビは陸揚げすると赤いので「サルエビ」となったわけですが、水中では赤くありません。
この個体は斑紋が赤くなく、くすんでいる個体です。かといってアカエビのようには見えません。
形態で同定するのが無難ですが、これまで撮影したキシエビと思われる個体は、額角は上縁6歯と胃上歯、下縁は無歯です、これはトラエビ、アカエビも同様です。
また、キシエビはトラエビやアカエビよりも額角が短いとされていますが、同様の長さのものから、短いものまでいます。
というわけで、形態での区分は難しく、色彩や斑紋で考えると、トラエビは地は青白地ですが、ほとんどの部分が鮮やかな赤色で覆われ、大きな斑紋があります。アカエビは青白地の部分が大きく、ややくすんだ赤色の斑紋があります。これに対しキシエビは前2種よりも斑紋が細かく破線状で、地色も薄い褐色です。
この個体は斑紋が少なく、かつ、はっきりしない個体です。しかし、赤っぽい個体や、斑紋のはっきりした個体と群れているのです。別種が群れる、というのも甲殻類では考えにくいように思います。
トラエビ、アカエビは、私が観察した限りでは外見に種内変異があまり見受けられないようですので、このタイプの個体もキシエビなのだろうと考えていますが、よく分かりません。