三保の外洋側斜面は攪乱の大きい場所で、絶えず環境が変化しています。したがって、ウミトサカ類がたまに生えることがあっても大きくなることはありません。ところがこういう高さ10cmにも満たない孤立したトサカにこの貝は付いております。一体どこからやってくるのでしょうか。写真の個体は1cmにも満たないので、浮遊幼生のうちにたどり着いて成長したということでしょうか。
ところで、ウミウサギ類はヤギ類やトサカ類に取り付き、喰い、卵まで産み付けることから、寄生しているとされています。ところが、実はトサカ類を食いちぎり、枝を落とし、枝からの再生を促すことによってトサカ類の群落形成に寄与しているとの観察例もあるようです。
共生や寄生といった関係は典型的な共進化であり、いつまでも一方的に被害を受け続けるだけではなく、長い年月の間に何らかの利益を得るよう進化したのかもしれません。海中のお花畑は実はウミウサギ類のお陰なのかもしれませんね。