本書は昭和38年初版であるにもかかわらず、図版はカラーの生態写真(水槽)という画期的な図鑑です。子どもの頃、この本が欲しかったのですが、当時から既に3000円位しましたのでなかなか買えませんでした。最初に検索表があり、その後カラー写真と解説があります。解説は簡易です。イタセンパラが「観賞用」とか、カワバタモロコが「鳥の餌」とあるなど、かつてはこうした種が珍しくも何ともなかったことが記述の随所から読み取れます。ちなみにイタセンパラの写真は放生津潟(現在の富山新港)産で、最後の輝きの如く婚姻色が極めて鮮やかに記録されています。(それからまもなく富山新港の工事が始まり、放生津潟のイタセンパラは絶滅してしまいました。)また、ウケクチウグイが初めて登場した図鑑です。巻末には方言も含めた和名索引があります。
昭和38年初版の同図鑑の全改訂新版。冒頭に検索表、次いでカラー図版(絵)を52頁にわたってまとめ、その後に種ごと(174種)の詳しい解説を記している図鑑です(カラー図版がないものは解説編に線画がある)。解説では多くの種で卵、孵化、仔魚、稚魚への過程を記した線画が掲載されています。種によっては繁殖の生態、産卵床などが図解されています。同じ著者により昭和62年に出版された『川と湖の魚①』『同②』(保育社)には、まもなく本書を改訂することが仄めかされていましたが、昭和51年改訂が最後のまま現在に至っています。
淡水のフィールド写真の草分けである桜井氏の写真によるハンディ図鑑。それまでの図鑑は絵が主体でしたが、昭和50年代に出版されたこの「野外ハンドブック」シリーズは、全面的に写真を使用し、図鑑の流れを大きく変えました。しかもサケ科、キュウリウオ科、ハゼ科など一部の魚にはフィールド写真が使われ、その意味でも画期的でした。携帯可能なハンディ図鑑で、濡れや汚れへの対策としてビニールのカバーが付いていました。このような装丁も、この後のハンディ図鑑の主流となりました。
「有明海」なども著した菅野氏によるオールカラーの図鑑。池・沼の魚、田んぼの魚、河口域の魚、琵琶湖の魚、北の川の魚、など、生息場所別に淡水魚を紹介しています。貝類、甲殻類の他、チスイビルなども掲載されています。他の図鑑とは独立した地位にある図鑑で、写真も本書でしか見られないものです。水槽写真がメインですが、水面から写した写真もかなり含まれています。
オールカラーのハンディ図鑑。写真は水槽写真中心です。タメトモハゼやタナゴモドキにフィールド写真が使われていたり、アサガラハゼのようなマイナーな種が掲載されていたりと意外性があります。本種の特徴は、ハンディ図鑑ながら、生息環境の写真なども比較的多く取り混ぜられていることです。また、分布域が日本地図上に図示されています。こうした特徴により、他のハンディ図鑑とは違った価値のある一冊です。
同社の「原色図鑑」シリーズをベースに、分類順にこだわらず(検索しやすく)、写真主体にして、一般向けにした「検索入門シリーズ」の一。①はコイ目やサケ目、②はスズキ目を主として収録しています。図版は写真(ほぼ水槽)の他、「原色日本淡水魚類図鑑」から流用された絵です。本書の特徴は欄外で、和名や学名の由来、地方名の紹介、種の特徴を示した線画など様々な蘊蓄が紹介されているとことです。
当時の日本の淡水魚ほぼ全種を扱った淡水魚図鑑の決定版。標本写真、豊富なフィールド写真、詳しい解説に加え、詳細な参考文献リストを含んだ大著。2001年にレッドデータ情報を含め、分類や学名を修正し改訂されましたが、写真や解説にはほとんど変更はありません。写真はなるだけフィールド写真が使用されており、第一人者によるすばらしい写真の集大成です。ヒゲソリオコゼなど南西諸島の魚類も矢野氏のフィールド写真とともに大挙収録されています。
このシリーズは分厚い割には製本が簡易で、使っているうちにばらばらになってしまいます。旧版では堅牢版も出ていましたが、私は厚紙と革で表紙を作って堅牢本に作り替えました。
※本の補修の仕方はこちらが大いに参考になります。「館内で本を修理する」アルテミス・ボナデア著(伊藤美樹 訳)株式会社 資料保存器材 2009
ハンディ図鑑。本書の特色は、なんといっても水中写真家の田口哲氏がフィールド写真にこだわった点です。さすがにタナゴ類の一部など、水槽写真もありますが、天然記念物のアユモドキや、撮影しにくい汽水魚がフィールド写真で紹介されています。本書は淡水編と汽水編に分かれていますが、特に汽水編は圧巻で、西表島で撮影されたテッポウウオが載っていたりします。他にもゴギの捕食、ハスの産卵、アジメドジョウの遊泳、トビハゼの水面跳躍移動(福田豊文氏の写真)など、貴重な瞬間を押さえた写真が多数掲載されており、私のようにフィールド写真にこだわる写真家なら本書はバイブルと言えるでしょう。また、水中撮影に関するコラムもあり、読み物としても興味深いです。
※デメモロコの写真はイトモロコと思われます。
そつのないハンディ図鑑。写真は水槽写真が主で、どれも美しいです。カエルハゼやタネカワハゼなどフィールド写真が使われた種もあります。本書の特色はむしろ解説部で、他のハンディ図鑑よりも詳しめです。どういうわけか著者のクレジットがありませんが、編集協力として渡辺昌和氏がクレジットされています。
田口氏による写真図鑑。小学館「日本の魚 淡水編」と同様、フィールド写真を主とした写真により構成されています。写真は、他の書籍とは重複がないよう工夫されており、例えばアユモドキでも同じ時に撮られた別ショットらしき写真が使われています。また、甲殻類、貝類、昆虫、カエル、カメがごく一部ですが掲載されています。
※デメモロコの写真はイトモロコと思われます。
この頃発行された図鑑にしては珍しく、A5判で、シリーズものではない図鑑です。同じ出版社から3年後に出る「淡水魚ガイドブック」とは著者も写真家も異なるため、内容に重なりはありません。写真は水槽主体ですが、フィールドもある程度含まれます。絶滅したクニマスとミナミトミヨも白黒イラストで収録されています。
昭和50年代の「野外ハンドブック」シリーズの後継的シリーズの一。ハンディサイズながら、掲載種ほぼ全部の標本写真を前半に配しています。後半には生態写真と各種ごとの解説。生態写真は水槽のものが多いですが、サケ科やキュウリウオ科など、フィールドの写真も使われています。写真も美しく、そつのない一冊です。後に「ビワヨシノボリ」となる種も別扱いで掲載されています。当初はビニール表紙の装丁でしたが、現在は簡易な表紙となっています。
水槽写真主体に、フィールド写真もかなり多く取り入れたハンディ図鑑です。新書版で他のハンディ図鑑より小さく、装丁も簡易です。巻末に飼育の方法や飼育難易度が記載されています。同シリーズに「海水魚」、「海辺にいる生きもの」があります。
「フィールドガイド」シリーズをさらに小型に、かつ入門者向けに仕上げたオールカラーの図鑑シリーズ。1000円と安価で、淡水魚のみならず甲殻類や貝類も収録されています。特筆すべきは南島の淡水テナガエビ類がカラー写真で紹介されたことでしょう。現在は薄い紙で再発されており、厚さも半分程度となっています。
本書はハンディ図鑑ながら、単に種の説明にとどまらず、サケやコイなど主要種について人との関わりや文化などにも触れた点で、他のハンディ図鑑とは差別化されています。その分、種類数は他の図鑑と比べると少なめです。2009年に出た改訂版では、外来魚が追補されています。
国外からの移入種のみならず、国内移入種についても紹介したカラー図鑑。写真は淡水を主なフィールドとされている松沢氏が担当。生態写真と標本写真から成り、いずれも文句の付けようがない出来映えです。国外移入種も問題ですが、国内移入種のことは忘れられがちです。これもきちんと掲載し、警鐘を鳴らしているのは極めて重要なことだと思います。
「山渓ハンディ図鑑」シリーズの向こうを張った平凡社「決定版」シリーズの一冊。外来の動植物の写真図鑑。出版当時確認されていた外来魚は、ほぼ全種掲載されています。
文庫サイズの写真図鑑シリーズの一冊。松沢氏による質の高いフィールド写真がかなり使われており、見応えがあります。
田口氏のこれまでの水中写真の総決算的なハンディ図鑑。小学館の「日本の魚 淡水編」と重なる写真も一部にありますが、初出のものが多いです。分類は最新の知見を踏まえてあります。分布は地図で示されています(都道府県が丸ごと塗りつぶされているので、県内のどの地域かまでは分からない)。サケマス類など種によっては、産卵などの生態シーンも収録されています(ビデオからの抜き焼きが主)。
「海水魚」編が出てからかなり時間が経過していましたが、「淡水魚」編も出版されました。最新の分類を踏まえて整理されており、カジカも大卵、中卵、小卵に、ジュズカケハゼも4種に分けられるなどして掲載されています。標本写真と水槽写真が主で、同定できる写真が指向されています。内山氏の写真はそれに見事に応えたものです。