事前に天気予報などで、上流部も含めて降雨の可能性がどの程度あるかよく調べておきます。
テント設営のところでも述べましたが、雨が降っていなくても水位が変動したり、水が濁ったりすることがあります。変化があったら、撤収した方がいい場合もあります。
最も危険なのは、雨が降っているのに水位が下がってきたときです。これは下流域ではあまり考えられないことですが、どこかで土砂や流木などによって水がせき止められていることが原因です。耐えきれなくなって一気に土石流が襲う可能性があるので、要注意です。
地域ごとに「内水面漁業規則」などがあり、禁止されている漁法などが決まっています。ウェットスーツを着ていると密猟者と間違われる可能性があり、通報されることもあります(夜間撮影で経験があります)。
こういったときに漁具を持っていると「撮影に来ただけ」と説明しても通用しないおそれがありますので、私は漁具は一切持たないことにしています。
基本的にできるだけ人のいないところで撮影するのが無難でしょう。
川にはアユなどを釣っている人がたくさんいます。釣り糸に絡まったりするとトラブルになりますので、近づかないようにします。もっとも、釣り人の方が関心を持って近づいてきて、その川や生物に関する貴重な情報が得られることもあります。
また、河川敷で子供が野球の練習などをしていることもありますが、陸上から石を投げてくることがあります。橋の下や高水敷のすぐそばなどは避けた方がいいでしょう。
【お願い】水中撮影中に声をかけられても残念ながらお答えできないことがあります
撮影中でない時は、地元の方々や釣り人とは挨拶するよう心がけています。川でウェットスーツやドライスーツを着ている人間は相当怪しく見えるはずです。一声掛けるだけである程度安心して頂けるでしょう。お互い気持ちよく過ごせるよう心がけております。
ところで、川の中でシャッタチャンスを窺っていると、岸辺から「何やってるんですか?」と話しかけられることが時々あります。しかし、「動いたら被写体に逃げられてしまう」という時もあります(こういうときはたいていじっとしています)。撮影中にこうした声が聞こえることもあるのですが(フードを被っているので実はあまり聞こえませんが)、申し訳ありませんが直ちにはご返事はできかねることがあります。水から上がったときにお声掛けいただけると助かります。
天然記念物(国が定めているものの他、自治体が定めているものもあります)や種の保存法の対象となっている種の場合は、地元の方々に手厚く保護されている場合が多々あります。こうした種の撮影の場合、事前に地元の行政に連絡し、指示を仰ぐべきでしょう。見ず知らずの人間が保護地にのこのこ入っていって撮影するのは地元の方に不快感を与えますし、通報されたらそれこそ地元の関係者にご迷惑を掛けてしまいます。
稀少な種が生き残っているのは、地元の方々の不断の活動があるからこそです。こうした努力に敬意を払うことはもとより、保全に寄与するくらいの心がけが大切でしょう。
夏場の午後は積乱雲が生じて雷雨となることがあります。水中でシャッタを切ったわけでもないのに閃光を感じたら、それは雷光です。雷光を感じたら、直ちに水から上がります。
かつては身につけた金属に雷が落ちるといわれていましたが、これは俗信のようです。雷は材質に関係なく高くて尖ったものに落ちるので、陸に上がり、テントから離れた場所でできるだけ姿勢を低くし、雷が止むのを待ちます。テントの中は危険です(テントに雷が落ちます)。同時に水位に注意します。水位が上がってきたり、水が濁ってきたら直ちに撤収です。
たいていの場合、雷雨は長くは続きませんので、水位や濁りに影響がない程度なら通り過ぎるのを待つという手も有効ですが、まれに長く続くことがありますので状況判断を的確に行うことが重要です。
下流域に付近に広大な川原が広がっている場合がありますが、うっかり荷物やテントを放置して撮影に没頭していると、いつの間にか潮が満ちて荷物が水没してしまうおそれがあります。私は仁淀川河口で携帯電話やデジカメなどを水没させてしまったことがあります。
あらかじめ、その川のどこまでが感潮域なのかを調べておきます。フィールドでは、河口域でのテント等の設営に当たっては、満潮時に潮がどこまで来るのかを調べ、満潮線以上の場所に設営します。たいていは川原に草木などのごみが帯状に貯まっているところがありますので、そこより高い場所に設置すれば大丈夫です。夜テントで寝ていたら潮が満ちてきた、なんてことになったら最悪です。
満潮線よりも低い場所にテントを設営せざるを得ないときは、水没しないよう潮の動きに注意しておきます。潮は干くときはゆっくりですが、満ちるときは早いので、満ち始めたら余裕を持って水から上がり、テントを移設するか片付けます。
撮影は干潮時に行うのか、満潮時に行うのかによって、撮影スケジュールが大きく異なります。
河口域でもそれなりに透明度のある河川であれば、干潮時に澪筋で撮影するのも可能ですが、一般に河口域の河川水は濁っており、少々深くなってもきれいな海水の入った状態で撮影した方がよいことが多いです。また、干潮時は次に述べる密度濁りがひどいことがありますので、要注意です。
茶色く濁った水も撮影不能ですが、一見きれいそうに見えても密度濁りは非常に手強いです。淡水と海水が混じると、焼酎に水を注いだときのようなもやもやが発生し、一寸先も不鮮明となります。ピント合わせも困難になりますし、どんなに接近しても鮮明に写すことは不可能となりますので、これをいかに避けるかが非常に重要となります。
一つは前述のように潮汐の時間を見計らって対応することで、もう一つは淡水と海水をできるだけ攪乱しないようにしつつ、表層のみ又は底層のみの撮影に特化することです。