ヒナモロコ

(コイ科 ヒナモロコ属)

Aphyocypris chinensis Günther, 1868

ヒナモロコ(福岡県の池)

絶滅危惧ⅠA

ヒナモロコ

オリンパスE-M1Ⅱ MZD12-40(21)/2.8 f8 1/90 Z-240×2(TTL)

福岡県の池 9月 水深40cm

 ヒナモロコは、我が国では福岡県~佐賀県の平野部に分布していた魚です。カワバタモロコによく似ており、生息環境も類似しています。カワバタモロコよりも体高が低く、側線も不完全であることが異なっています。また、繁殖期にはカワバタモロコの雄が黄金色を呈するのに対し、本種はそのような顕著な変化は知られていません。

 さて、大変残念なことですが、現在、純粋な「ヒナモロコ」は見いだされておりません。写真の種は、ヒナモロコと外来のAphyocypris kikuchii (Oshima, 1919)の交雑となります。

 遺伝子解析の結果、域外保全されている個体群も含め、既知のヒナモロコ個体群は、すべて交雑又は外来ということが近年の研究で判明しました。(Watanabe et al., 2020)

 日本産ヒナモロコと交雑していることがわかったのは台湾原産のA.kikuchiiです。「kikuchii」という種小名は、台湾で活躍した動物学者、菊地米太郎氏への献名です(記載はサケ類の研究で知られる大島正満氏)。

 1990年代頃から流通したといわれるA.kikuchiiがどこかで混入し、親魚交換などを通じて遺伝子攪乱が広まり、結果、2010年頃までには既知の全ての個体群で純系のヒナモロコは失われたと考えられています。

 未発見の野生個体群がどこかに生息している可能性は否定できませんが、現状、ヒナモロコは「野生絶滅」のみならず、「絶滅」ということになります。

 写真は、日本産ヒナモロコの遺伝子の割合が最も高い保全個体群です。

 警戒心は比較的薄く、じっとしていると寄ってきて、あちこちつついてくるくらいです。ちょっと馴らせば、ポートの前に来るので、レンズを広角側にしていても大きく写すことができます。あまりじっとしておらず、止まっても一瞬です。積極的に群れを作る、というほどではなく、群れを作っていても緩い群れで、基本それぞれ好き勝手に行動している感があります。観察した限り、中層よりも上を泳ぐことはなく、底層メインで過ごしています(表層はミナミメダカ)。

 大型の老成魚は物陰にいます。老成すると体高が高くなり、あまり「ヒナ」という感じはしません。長いものでは6-7年生きるそうです。

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