コシノハゼは旧ジュズカケハゼ4群のうちの「ジュズカケハゼ鳥海山周辺固有種」に相当します。新潟県・山形県・秋田県のごく限られた地域の池、水路にのみ棲息するとされています。環境省レッドデータブックでは「鳥海山周辺地域のジュズカケハゼ」として「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されています。
相対的に頭が大きく寸詰まりで、下あごが突出した独特の顔つきをしており、他のジュズカケハゼ類とも遺伝的に大きく異なるとされています。また、婚姻色の出方も薄くて黄色い縞が明瞭に出ないとのことです。
写真の個体は泥深い池からの流出口で撮影した未成魚です。浅い緩流部に多数見られました。逆にこうした場所以外では隠れ場所が多いためか見つけられませんでした。浮くことはあまりなく、泥底に定位しており。時折飛び上がって浮遊物を食べています。
深さ15cm程度の浅場であったため、大型の機材での撮影は難しく(泥が巻き上がり、取り回しが困難)、コンデジを使って自然光で撮影しました。未成魚であるためか警戒心はあまり強くなく、カメラで直前まで寄っても逃げません。
撮影地では、4月下旬が繁殖期のようで、婚姻色の出た雌がヒレを全開にして泳ぎ回っているのを観察することができました。雌はほぼ黒一色で、他のジュズカケハゼ類のように黄色くなる部分がありません。こういう状態の雌は寄ってもあまり逃げません。また、常にヒレ全開です。
しばらく観察していると、雄を誘っての婚姻遊泳が見られました。写真はその様子で、雌雄ともヒレ全開で、円を描くように寄り添って泳いでいます。このような雌雄による遊泳はゴクラクハゼでも観察しています。
巣穴は落ち葉の下に掘られているようで、雌が雄を誘っていました。落ち葉の下なのでよく分からないのですが、どうやら巣穴の取り合いがあるらしく、入口付近で雄どうしが口をめいっぱい開けて争っていました。写真はその様子です。
ウキゴリ属は雌に婚姻色が出て、繁殖も雌主導のように見えますが、雄もしっかり闘争するようです。