ムサシノジュズカケハゼ(ジュズカケハゼ関東固有種)

(ハゼ科 ウキゴリ属)

Gymnogobius sp.1

ムサシノジュズカケハゼ(那珂川)

絶滅危惧IB

ムサシノジュズカケハゼ 雌の闘争

オリンパスE-3 ZD50/2 f8 1/60 Z-240×2(TTL)

那珂川 3月 水深40cm

 従来「ジュズカケハゼ」とされていたものは、以下の4種に再分類されました。

①ジュズカケハゼ (ジュズカケハゼ広域分布種)

 関東、北陸以北に広く分布し、主に池や湖沼に棲息。繁殖期の雌の第1背びれにふつう黒班があるとされる。

コシノハゼ (ジュズカケハゼ鳥海山周辺固有種)

 新潟県・山形県・秋田県のごく限られた地域の池、水路にのみ棲息。レッドデータブックでは「鳥海山周辺地域のジュズカケハゼ」として「絶滅のおそれのある地域個体群」。

③ホクリクジュズカケハゼ (ジュズカケハゼ富山固有種)

 富山県の射水地方でのみ確認。レッドデータブックでは「富山平野のジュズカケハゼ」として「絶滅のおそれのある地域個体群」。

④ムサシノジュズカケハゼ (ジュズカケハゼ関東固有種)

 那珂川水系・利根川水系・荒川水系・多摩川水系の河川中流域に棲息する(池や湖沼には棲息しない)。瀬能、矢野他『決定版 日本のハゼ』(平凡社、2004)では、ウキゴリ属sp1。雌の第1背びれには黒班は不明瞭。レッドデータブックでは当初「絶滅のおそれのある地域個体群」とされていた。現在は絶滅危惧ⅠB。

 撮影地の雌個体はどれも明瞭な黒班が確認できません(水中ではヒレが真っ黒なので、よく分からないというのもあります)。当初は①ジュズカケハゼ(旧:広域分布種)ではないかと考えていましたが、ムサシノジュズカケハゼとのことです。

 ウキゴリ属は繁殖期になると、雌に婚姻色が発現しますが、本種もその例に漏れません。3月頃になると、泥底に竪穴がところどころ見られますが、これは雄が造った巣穴です。雌は写真のような婚姻色を示し、ヒレを全開にして闘争したり、雄に求愛します。中には卵がはみ出しかけている雌もいます。

 警戒心には個体差があり、慌てて頭から泥中に潜り込む雌もいます。闘争時には、ヒレ全開、下顎を膨らませますが、さほど長くは続きません。しかもホバリングは一瞬で、着底するとまず尻ビレをたたんでしまいます

ジュズカケハゼ関東固有種(那珂川)

ムサシノジュズカケハゼの稚魚

オリンパスE-3 ZD50/2 f8 1/60 Z-240×2(TTL)

那珂川 5月 水深10cm

 5月には写真のような浮遊稚魚が、岸寄りの植物の下で群れをなして浮遊しています。

 ウキゴリ属は孵化当初は第2背びれしか発達しておらず、しばらくしてから第1背びれが発達し始めます。

 この個体もよく見ると第1背びれが現れつつあります

ジュズカケハゼ関東固有種(多摩川)

ムサシノジュズカケハゼ

オリンパスE-3 ZD35/3.5マクロ f8 1/125 Z-240×2(TTL)

多摩川 7月 水深40cm

 本種は那珂川、利根川、荒川、多摩川の4水系の河川中流域のみに分布するとされるウキゴリ属の一種です。池や沼には分布せず、河川本流(中流域)に棲息します。

 撮影地の多摩川では、主として流れの緩い場所に見られますが、かなりの急流部で見たこともあります。群れず、単独で生活しています。

 RDBでは、東京都、神奈川県の個体群は絶滅寸前とされていますが、撮影地ではかなり多いように感じられます。多摩川もこの辺りまで来るとトウヨシノボリは見られないため、その地位を本種が占めております。礫の上などにかなり見られます。

 ヨシノボリ類と比べると警戒心が強いため、ファインダを覗きながら接近することが必須です。

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