従来「ジュズカケハゼ」とされていたものは、以下の4種に再分類されました。
①ジュズカケハゼ (ジュズカケハゼ広域分布種)
関東、北陸以北に広く分布し、主に池や湖沼に棲息。繁殖期の雌の第1背びれにふつう黒班があるとされる。
②コシノハゼ (ジュズカケハゼ鳥海山周辺固有種)
新潟県・山形県・秋田県のごく限られた地域の池、水路にのみ棲息。レッドデータブックでは「鳥海山周辺地域のジュズカケハゼ」として「絶滅のおそれのある地域個体群」。
③ホクリクジュズカケハゼ (ジュズカケハゼ富山固有種)
富山県の射水地方でのみ確認。レッドデータブックでは「富山平野のジュズカケハゼ」として「絶滅のおそれのある地域個体群」。
④ムサシノジュズカケハゼ (ジュズカケハゼ関東固有種)
那珂川水系・利根川水系・荒川水系・多摩川水系の河川中流域に棲息する(池や湖沼には棲息しない)。瀬能、矢野他『決定版 日本のハゼ』(平凡社、2004)では、ウキゴリ属sp1。雌の第1背びれには黒班は不明瞭。レッドデータブックでは当初「絶滅のおそれのある地域個体群」とされていた。現在は絶滅危惧ⅠB。
撮影地の雌個体はどれも明瞭な黒班が確認できません(水中ではヒレが真っ黒なので、よく分からないというのもあります)。当初は①ジュズカケハゼ(旧:広域分布種)ではないかと考えていましたが、ムサシノジュズカケハゼとのことです。
ウキゴリ属は繁殖期になると、雌に婚姻色が発現しますが、本種もその例に漏れません。3月頃になると、泥底に竪穴がところどころ見られますが、これは雄が造った巣穴です。雌は写真のような婚姻色を示し、ヒレを全開にして闘争したり、雄に求愛します。中には卵がはみ出しかけている雌もいます。
警戒心には個体差があり、慌てて頭から泥中に潜り込む雌もいます。闘争時には、ヒレ全開、下顎を膨らませますが、さほど長くは続きません。しかもホバリングは一瞬で、着底するとまず尻ビレをたたんでしまいます
5月には写真のような浮遊稚魚が、岸寄りの植物の下で群れをなして浮遊しています。
ウキゴリ属は孵化当初は第2背びれしか発達しておらず、しばらくしてから第1背びれが発達し始めます。
この個体もよく見ると第1背びれが現れつつあります
本種は那珂川、利根川、荒川、多摩川の4水系の河川中流域のみに分布するとされるウキゴリ属の一種です。池や沼には分布せず、河川本流(中流域)に棲息します。
撮影地の多摩川では、主として流れの緩い場所に見られますが、かなりの急流部で見たこともあります。群れず、単独で生活しています。
RDBでは、東京都、神奈川県の個体群は絶滅寸前とされていますが、撮影地ではかなり多いように感じられます。多摩川もこの辺りまで来るとトウヨシノボリは見られないため、その地位を本種が占めております。礫の上などにかなり見られます。
ヨシノボリ類と比べると警戒心が強いため、ファインダを覗きながら接近することが必須です。