トミヨ属雄物型

(トゲウオ科 トミヨ属)

Pungitius kaibarae (Tanaka 1915)

トミヨ属雄物型(天童市の湧水池)

絶滅危惧ⅠA

繁殖に参加していない個体

オリンパスE-3 ZD12-60(17)/2.8-4 f8 1/90 Z-240×2(TTL)

天童市の湧水池 4月 水深40cm

 トミヨ属淡水型とは別種とされる陸封型のトミヨです。近年の高橋洋氏らの研究で、本種は日本海の南部沿岸域(ロシア沿海州~朝鮮半島東部)に分布する種と同一系統であることが強く示唆されており、となればひとまずPungitius kaibarae(ミナミトミヨ)に該当する、と言ってよいかもしれません。今後の精査を待つところです。(ただし、京都や兵庫にいた「ミナミトミヨ」と同一かどうかまでは不明。)

 本種と他のトミヨ属との違いとして、①背ビレの棘が短い、②背ビレの棘鰭膜が黒い(淡水型は透明)、③体高が高い(ただしムサシトミヨよりは低い)、といった点が挙げられます。

 本種は山形県及び秋田県のごく限られた湧水地帯にのみ残存しています。撮影地では地元の行政や団体により手厚く保全されており、生育環境と個体数が維持されております。湧水池の水位が下がったときはポンプを稼働して水位と水温を保ち、抽水植物を適宜刈り払い、冬場は鳥除けのためにテープを張り巡らす、など大変な努力が払われており、頭が下がるばかりです。

 湧水池なので撮影にさほど困難はないだろうと思っていたのですが、実際はあらゆる場所でアオミドロの腐植質に苦しめられました。枯れたアオミドロに気泡が付着し、浮いたり、沈んだり、中層を浮遊し、ちょっとでも動くと細かく分解して周囲を濁らせるのです。底層にあるものが舞い上がるばかりでなく、表層にあるものも水面移動しただけでばらけ、沈降し、あるいは中層に漂います。写真でも、アオミドロ腐植質が水面や水底を覆っているのが分かると思います。カメラを置いたら置いたでカメラを持ち上げる際に舞い上がってしばらく撮影になりません。このため、フラッシュのアームを外すなど機材をできるだけコンパクトにまとめました。

 さらに、昼間は光合成でできた酸素が腐植質にくっつき、浮き上がるため厄介です。この気泡はカメラのポートにも付着します。時折ポートのガラス面を水面(空気中)に出し、気泡を除去しなけばなりません。その動作でまた濁りが発生します。夕方が近づくと、気泡の影響は落ち着いてきますが、これらを乗り越えて、始めて撮影可能となります。

 さて、本種は雌雄とも淡水型と比べ警戒心が強いようです。ファンニングしている雄であっても近くの物陰にすぐ隠れ、こちらの様子を窺います。淡水型のように、さして馴らさずとも撮影者にお構いなくファンニングすることはありません。巣の付近には腹の大きい雌がそこそこいて、求愛を受けています。しかし、近寄るとぴたりと行動を止めてしまい、茂みに隠れてしまいます。繁殖と関係ない個体もさっさと逃げますし、石の下に隠れていることもあります。全体に淡水型とは性格が異なり、隠遁性、警戒心が強いように思います(陸上から確認するのも難しいらしい。)。

 撮影時期は4月初頭ですが、まだ繁殖初期で、仔魚は全く見かけず、全長4-5cmの親魚が多数みられました。雄は岸寄りで抽水植物がある場所にいます。池中央部に抽水植物があっても、そこには黒い雄は見られませんでした。一方、雌(+婚姻色の出ていない雄?)は岸寄りだけでなく、写真のように池の中央部でも見られます。画面後方にも数個体が底層に確認できます。

トミヨ属雄物型(天童市の湧水池)

侵入雄を威嚇する縄張り雄

オリンパスE-3 ZD12-60(42)/2.8-4 f8 1/90 Z-240×2(TTL)

天童市の湧水池 4月 水深40cm

 いくつかあった巣のうち、最も活動的だった雄に目星をつけ、そこでひたすらチャンスを待つことにしました。カメラをゆっくりと巣の前に置いて、当分馴らします。決して撮影しやすい場所ではないのですが、動きさえしなければ、さほどアオミドロに苦しめられることもありません。十分に馴らした後、雄の自然な行動を観察します(フラッシュには全く動じません)。

 この雄は巣作りを盛んに行っており、巣材を咥えてきて巣穴の中に入れています。腎臓から出る粘液で巣の回りを固めるのも頻繁に行っています。時折巣の中に頭を突っ込んで内部を整えます。ファンニングしている(さほど頻繁ではないが)ので、卵があるのでしょう。

 写真は婚姻色の出ている縄張り雄が侵入雄を威嚇している様子です。

 雄が縄張り内に侵入した場合には、闘争が起きます。この際は、すべての棘を立て、追い払います。追い払いは一瞬で勝負が付きます。迂闊にカメラを動かすと濁ってしまうので、残念ながら侵入雄を同じ画面に写せていません。

 写真でも分かりますが、追い払いの際は腹の棘も立てます。膜は淡水型やムサシトミヨ同様、青白です(汽水型は白)。背びれの棘鰭膜が黒いことが分かります。体側の斑紋は、ムサシトミヨや淡水型より複雑で、雌の体色が非常に明るいと感じました。

 繁殖活動は、昼間が盛んなようで、16時を過ぎるとあまり動きがなくなってしまいます。

トミヨ属雄物型(天童市の湧水池)

雌を巣に誘う雄

オリンパスE-3 ZD12-60(19)/2.8-4 f8 1/90 Z-240×2(TTL)

天童市の湧水池 4月 水深40cm

 上の写真と同じ雄です。

 この巣は水面に近い浅場でしたが、雌はそれなりに通過し、ジグザグダンスにより求愛する様子が観察できます。ジグザグというよりは、体をくねらせる激しい動きにより、雌の気を惹くと言った方が正しいかもしれません。雄が雌を追尾する様子もよく見られましたが、たいていは雌に逃げられてしまいます。

 写真は、雌を巣穴に誘っている様子です。雌の腹は卵で大きくなっています。この状況に2度遭遇しましたが、いずれも産卵には至りませんでした。

▲ページ先頭へ▲


 一覧表 分類別 


TOP