ツバサハゼ

(ツバサハゼ科 ツバサハゼ属)

Rhyacichthys aspro (Valenciennes, 1837)

ツバサハゼ(西表島の河川)

絶滅危惧ⅠA

ツバサハゼ

オリンパスE-3 12-60(37)/2.8-4 f8 1/60 Z-240(TTL)×2

西表島の河川 5月 水深30cm

 本種はハゼ類の中で最も原始的とされ、現在ではツバサハゼ科という独立した科に含められています。扁平で特異な形をしており、ハゼ類というよりはコイ目のタニノボリ類に形態、生態とも似ています。本種も日本での発見当初はタニノボリ類との説もあったようです。

 本種は「昼間は非常に警戒心が強いが夕方から夜間は逃げない」とされているので、夜間撮影に挑むことにしました。西表島の夜は遅いので、日がどっぷり暮れて暗くなるのを待ちます。まずはカメラは持たず、水中ライトだけを持って目星を付けておいた場所にゆっくりと近づきます。すると20cm弱のツバサハゼが1匹岩盤に張り付いていました。観察を続けると逃げられる可能性があるため、ゆっくり引き上げます。カメラを持ち、フォーカスライトの光量を最小にして接近します。ごくゆっくりと近づくのですが、ツバサハゼは寝入ってはいなかったようで、光に反応したのか小刻みに位置を変えながら下流方向に後ずさりします。こういう場合はじっとしていても逃げられてしまうので、十分接近はできていませんが、まずは撮影しました。2回目にシャッタを切った時には、下流向きに向き直り、逃げの姿勢に入っていました。その直後、下流に向かって滑空するように泳ぎ去ってしまいました。引き返して時間を潰しては同じ場所に行ってみるのですが、その夜はもう戻ってくることはありませんでした。別の場所で寝入ったのでしょう。

 そこで、翌朝同じ場所に戻ってくるのを期待することにしました。早朝、カメラを持って昨日撮影した場所にごくゆっくりと近づきます。まず2匹(20cm弱と15cm弱)を確認しましたが、これらはじわじわと後退し、滑るように逃げてしまいました。自分としては考え得る限りゆっくりと寄っているので、「これで逃げるのかよ!」という感じです。日中の警戒心の強さは半端ではないようです。ふと上流を見ると、別の1匹(15cm弱)が目視できました。今度こそ逃げられないよう、慎重に寄ります。逃げられては元も子もないのでまずは遠くからでも撮影しました。夜が明けているので、フラッシュはさほど気にしないようです。ただ、急流なので気泡が多く、かなり寄らないと見られた写真になりません。ある時点で突然視界から消えてしまいた。「逃げられた!」と思ったのですが、幸運なことに、手前の岩の出っ張りに乗っかってくれました。この機会を逃すまじと2枚は撮影できましたが、3枚目にはきびすを返して下流側に逃げてしまいました。起きている本種を撮影するのは至難の業では?と思いました。

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