コウガイメナガガザミ

(ワタリガニ科 メナガガザミ属)

Podophthalmus minabensis Sakai, 1961

コウガイメナガガザミ(三保)

コウガイメナガガザミ

オリンパスE-1 ZD50/2マクロ f6.7 1/30 Z-220(フル)+D-180(フル) 撮影距離80cm

三保 11月 水深23m

 惑星探査中にクレーターから謎の生物出現、という感じの、強烈な印象を与えるカニです。

 本種は和歌山県の郷土生物研究家、尾崎光之助氏により発見され、昭和36年に記載された珍種です。これまで数例しか捕獲例がなく、長らく幻とされてきましたが、近年になって駿河湾、沖縄、フィリピンなどで観察、撮影されています。「コウガイ」というのは「笄」のことで、髪結いの時に髪を巻き付けて髷をつくるための道具です。陸に棲む扁形動物で「コウガイビル」というのがいますが、形が笄に似ていることに由来しています。本種も眼柄が笄に似ていることからこのような命名がなされたようです。

 三保では堅めの泥地に巣穴を掘って生活していますが、他のポイントでは砂底で観察されることもあるようです。

 眼柄が長いことから容易に想像はつくのですが、本種は極めて警戒心が強く、こちらが見つける前に穴に入ってしまいます。このため、撮影可能な個体を発見するのがまず困難です。発見しても、1m以内に寄るのはなかなか難しいようです。しかも写真にあるようにクレーター状の穴を掘っていることも多く、警戒されないためにこちらが体を低くしていると被写体の下半部が隠れてしまい、図鑑写真になりません。この後も何度かトライしているのですが、なかなか図鑑写真が撮れません。

 甲殻類は昆虫と同じ節足動物であり、脳がありませんから学習することもなく、魚類のように「馴らす」ことができません。また、好奇心もありません。このため、共生ハゼ等の巣穴系の魚に接近するりも撮影難易度は高いといえましょう。

 甲殻類に脅威を与えるのは震動や動きだと思われます。ごくゆっくり動くことで動きは消すことができても、スクーバでは吸排気は不可避ですので、震動は消せません。このように多くの難しい条件が重なっており、本種は観察、撮影が難しい種と言えるでしょう。

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