昭和52年に天然記念物に指定された希少種です。
写真の個体は全長7-8cm程度の未成魚で、複数で石の隙間に潜んでいました。隙間から表に出てきては、周囲の礫の表面や礫下をついばんでいるのが観察されました
本種は動物食とされていますが、明確に昆虫類や微少な巻貝類を捕食しているところまでは確認できませんでした。いずれにしても、本種は他のドジョウ類と異なり、砂泥を喰って有機物を濾し採り、鰓から砂を吐き出す、という行為は見られません。
夜行性とされている文献もありますが、昼間も盛んに活動していました。
体色は水槽で見るものよりも黒っぽく、横縞が残るものの不明瞭です。尾ビレをはじめ、各ヒレの付け根には黄色い班があり、水槽で見るよりもはるかに艶やかな感じがします。
警戒心はそこそこ強く、不用意に接近すると隠れ家に逃げ込み、しばらくは出てきません。
本種は遊泳性で、流れに対して定位はせず、跳ねるように泳ぐ(水中でぴょんぴょん跳ねている感じ)ため、撮影は簡単ではありません。ただし、摂餌中は礫表面をつついては少し後退する、という行動を繰り返しますのので、シャッタチャンスはその時です。後退して止まる瞬間にヒレを開きます。
上から見るとアユに似ていて、特に産卵期の黒っぽい婚姻色となったアユと似ています。
考察するに、本種は石の隙間に群れて定住し、そこを本拠地として周囲の礫の表面や礫下の昆虫類・巻貝類を食べているように思われます。このため、本種の生息には、礫底が必要なのではと思われます。
未成魚と同様、遊泳性で、流れのある場所におります。水中で観察していると、抽水植物や障害物の下流側で常に遊泳しており、たまに障害物の下流側に着底して休息します。単独で見られることもありますが、通常は小さな群れをつくっているようです
抽水植物の表面を盛んにつついていましたので、付着した生物を食べているようです。他のドジョウ類のように、砂泥中の有機物をついばむ行動は見られませんでした。
写真は小休止している状態を撮影したもので、後方に写っているのは、アユモドキ調査用トラップです。
【附記】
我々人間は、安定した環境が生物をはぐくむと勘違いしがちです。しかし自然はそう単純ではありません。極端な例では、山火事がないと繁殖できない植物まであります。アメリカやカナダに分布するコントルタマツというマツの一種は、火事の熱がないと松かさが開かず、種が落ちません。裸地に生えるパイオニア植物は噴火、倒木、土砂崩れなどの攪乱がないと子孫を残せないのです。
様々な自然災害に対しても、一部の生物は適応・進化してきており、それが多様な種をはぐくんでいることを忘れてはなりません。