本種は上流部に棲んでいることもあってか、比較的最近まで知られていなかった種です。地元の人でもほとんどその存在を知らない、とされています
四国のものは斑紋も異なり、「ヒナイシドジョウ」として別種になりました。
本種を探しに行ったのは両側がかなり深い谷になっていて、川に降りることすらままならないような場所です。まずは川へ降りられる場所を見つけ、降りたら川の中を移動しながら探します。カメラを持って移動するのは大変なので、手ぶらで捜索しました。アジメドジョウは撮影したことがあるので、似たような環境(緩流部かつ浮石)を探しました。しかし、いかにもいそうな場所でもなかなか見つかりません。丸一日探し回った挙げ句、初日は捜索を断念しました。
翌朝、さらに上流を探してみました。ようやく1匹が岩の表面の珪藻類を食べているのを見つけました。しばらく静止して観察し、場所をマーキングしました。少し下流でもう1匹発見しました。そっと現場を離れ、引き返してカメラを持ってきました。
先ほど見つけた個体はもう見あたりませんでしたが、別の個体が摂餌していたので、これを撮影したのが上の写真です。その後しばらくしてからもう1匹発見しました。しかしこれらの個体が礫の下に隠れてしまってからは動きがなく、待てど暮らせど出てきません。接近してもアジメドジョウのように遊泳して逃げるのではなく、すぐに礫の下に隠れてしまいます。しかもいったん隠れるとなかなか表に出てきません。アジメドジョウも結構警戒心が強いのですが、本種はそれ以上です。その挙動はドジョウ類というよりアカザに似ています。昼になってからは全く見つからなくなりました。
十分な観察ができたわけでは決してありませんが、本種は昼行性とは思われるものの、おそらく朝摂餌を始め、一通り喰ったら礫の下で休息するものと考えられます。
本種にとっては浮石が必要条件であり、しかも遊泳力にも乏しい(あるいは遊泳する気がない)ことから、「なるほど、こういう場所にしかいないのか」と妙に納得させられました。棲息場所はアジメドジョウよりはかなり限定的です。工事などでだらだらと長期間土砂が出ると、礫が埋まり、著しい打撃を受けると思われます。結局2日間で見つけたのは4個体のみでした。