カワヤツメ[陸封個体群]

(ヤツメウナギ科 カワヤツメ属)

Lethenteron japonicum (Martens, 1868)

カワヤツメ[陸封個体群](阿賀野川)

絶滅危惧Ⅱ

カワヤツメ[陸封個体群]のアンモシーテス

オリンパスE-3 ZD12-60(48)/2.8-4 f8 1/90 Z-240×2(TTL)

阿賀野川 5月 水深40cm

 一般にカワヤツメは川で15-20cmほどに成長すると、降海してサケ・マス類に寄生し、そのまま川に遡上して繁殖するという生活史を持ちます。

 一方、撮影地は分布の南限付近に当たり、ここでは陸封のまま成魚となり、繁殖する個体群がいます。当初はスナヤツメと思われていたのですが、「尾びれが黒い」というカワヤツメの特徴を呈しているため、遺伝子を調べてみるとカワヤツメと分かった、という経緯があります。

 陸封個体群は成魚になっても①銀毛にならず、②寄生生活を送らず、③小型のまま、とされています(要するにスナヤツメっぽい)。さらに近年、陸封ながら寄生生活を送り、大型になって銀毛化する集団がいることも分かっています。サケ・マス類と同様、南方に行くにつれ陸封になるのだと思われますが、生殖的にどの程度隔離しているのか興味深いところです。

 現地の古老(当時92歳の男性)から伺ったところでは、ダムがまだなかった頃は、水量が現在の2倍くらいあって、マス(サクラマスと思われる)が遡上していたそうです。マスが見つかると、地元のマス獲り名人に知らせに行き、名人は縄でつながれた銛でマスを突きに行ったとのことです。縄で泳がせることで、抵抗少なく引き寄せられたのだそうです。その頃には、降海型のカワヤツメもマスにくっついて遡上していたのかもしれません。

 撮影地では、まずアンモシーテスを探してみることにしました。かなり上流部ですが、河道は広く、河川内にいくつかの分流があります。ある分流の淵の直下岸寄りに形成されていた砂だまりを探ると、中からアンモシーテスが出てきました。

 アンモシーテスが潜っているのは、比較的細かい砂で、かつ植物質がある程度混じっている場所です。粗い砂の中にはいません。また、中州の岸や、淵の底など流芯部の砂にはいません。

 前述のように、カワヤツメの特徴は、背びれの先端や尾びれが黒いことです。これはアンモシーテスでも同様です。小型のアンモシーテスは赤っぽい色をしていますが、それでも尾びれは黒くなっています。大形のアンモの体色は黄土色ですが、やはり写真のように尾は黒いです(写真の個体は全長20cm弱)。

 さらに、スナヤツメより筋節数が多いとされています。鰓から肛門までの筋節数がスナヤツメ南方種では49-62、同北方種では51-66に対し、本種は通常65-77です。

 同じ砂に潜っているシマドジョウ類のように瞬発的な動きはせず、ゆっくり一定の動きをします。逃げる際は、底に適切な砂地がない場合、突如水面近くに躍り出て、流れながら岸寄りの砂底を探し当てます。予測しがたい動きをすることで、敵からの捕食を回避しているのでしょう(この動きはスナヤツメ北方種でも確認。)。頭が砂に隠れると少し安心するようで、頭を砂に突っ込むと、あとはゆっくりと潜っていきます。いずれにしても素早く撮影する必要があります。

 産卵期に当たっていたため、成魚をかなり広範囲に探し回りましたが、結局見つけることはできませんでした。

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