近年の研究により、従来「スナヤツメ」とされてきた種は、北方種と南方種に分けられました。北方種は中部以北に、南方種は本州~九州北部に分布するとされ、棲息域が重なる地方もあります。ただ、生息域が重なる場合であっても、北方種は湧水環境など冷水域に限って棲息するようです。
これらは外見上は区別できませんが、かなり分化を遂げており交雑せず(いわゆる隠蔽種群)、北方種は南方種よりもむしろカワヤツメやシベリアヤツメに近縁であるとされています。
この地域には両種が分布しますが、この地点の個体は北方種です。湧水のみを水源とする細流に棲んでおります。この地点は北方種の南限に近いため、縄文期以降の温暖化に伴い、湧水環境のみに残存したものと思われます。産卵は湧水がしたたり落ちる場所で数匹の集団により行われていました。口で石に吸い付いて固定しつつ、体をくねらせて産卵しています。産卵孔はやや赤みを帯びています。卵は直径1mmほどの球形です。