ヤマトイワナ(ナガレモンイワナ)

(サケ科 イワナ属)

Salvelinus leucomaenis japonicus Oshima, 1961

ナガレモンイワナ(琵琶湖流入河川)

ヤマトイワナ(ナガレモンイワナ)

オリンパスE-3 ZD12-60/2.8-4 f8 1/90 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 8月 水深50cm

 一応、琵琶湖周辺のイワナは「ヤマトイワナ」ということになっているので、標記はひとまずそれに従います。

 実際には湖東、湖西を問わず「琵琶湖流入河川のイワナ」と称した方が正しいのかもしれません。詳しくは亀甲武志「琵琶湖水系のイワナの起源と保全管理に関する研究」(滋賀県水産試験場報54 2011)をご覧ください。

 この沢に棲む在来のイワナは、体側に白斑ではなく、流れたような紋があるため、通称「ナガレモン(流れ紋)イワナ」と呼ばれています。

 撮影場所は相当な山奥です。細い沢を遡り、滝をいくつも巻きながら、魚影を探します。ここまで来ると、他の魚は全く現れず、イワナしかいません。

 出会う個体はすべてナガレモンで、放流起源の白斑のイワナは見かけません。

 写真のような比較的大きめの個体は、瀬から淵への落ち込みといった条件のよい場所に定位しています。警戒心はさほど強くなく、馴らせば目の前まで寄ることができます。フラッシュにも全く動じません。むしろ気泡との戦いです。

ヤマトイワナ(ナガレモンイワナ)(琵琶湖流入河川)

ナガレモンイワナのつがい

オリンパスE-M1Ⅱ MZD12-40(12) f8 1/8 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 11月 水深40cm

 繁殖期のナガレモンどうしのつがいです。

 この時期は、大型個体は黒ずんだ婚姻色を呈します。頭が黒く、下側のヒレ前端が青白くてよく目立ちます。大型個体はたいそう警戒心が強く、危険を察知すると瞬時に消えてしまい、二度と見ることはありません。

 日が傾き、15時半を回った頃、ようやくつがいを発見しました。滝の淵尻で産卵床を作っています。尾びれで穴を掘っているのは雌で、後方にいるのが雄です。この日は天候が悪い上、11月のV字谷はあっという間に暗くなっていきます。

 「あと30分」

 自分に言い聞かせて、カメラを取りに戻ります。

 カメラを取って匍匐前進で戻ると、相変わらずつがいはそこにいます。「少し前進しては深く5呼吸」を繰り返し、じわじわと接近していきます。つがいまでの距離は約30cm。雌は穴を掘っては尻ビレで深さを確かめる、というサケ科魚類共通の行動を繰り返しています。フラッシュにも全く動じません。雄は時折前進して雌の腹のあたりをつついています。産卵を促しているのでしょう。

 さすがに暗くなってきたので、ターゲットライトを点灯しましたが、これにも動じません。時計を見ると16:15。このまま観察していれば目の前で産卵したと思われますが、これ以上沢にとどまるのは危険ですので引き返しました。

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