近年新種記載された、淀川下流を中心に生息するゼゼラです。
本種は氾濫原適応種と考えられ、本流や大きな湖沼ではなく、湾処や水路といった小規模水域に生息します。形態的にもゼゼラよりも体高、尾柄高が高く、ゼゼラに比べ寸詰まりです。雄の背びれは大きくなり、ツチフキの背びれのような形になります。
繁殖期に、淀川の湾処のいくつかに入ってみました。卵塊は多数見つかるのですが、親魚がなかなか見つかりません。この時期、雄がいれば、あまり着底せずに中層を飛び跳ねているはずです。
湾処にいくつか潜って、やっと1匹の雄が見つかりました。案の定ぴょんぴょん泳ぎ回っています。あまり黒くはありませんが、全身ぎらついており、特に下側のヒレの水色が目立ちます。ヤナギの根を中心に縄張りを形成しているようで、しばらく持ち場を離れることもありますが(雌を探しに行っている?)、必ず同じ場所に戻ってきます。縄張り内では、ギンブナ稚魚やニゴイ稚魚まで追い払います。根に卵はまだないので、産卵はこれからと思われます。俊敏に泳ぎ回っていることが多いのですが、着底することもあります。
結局、見つけられたのはこの1匹のみでした。どうやら産卵は断続的なようで、何らかの条件が揃った際に一斉に産卵し、私が潜ったときはちょうど中休み、ということのようでした。浅場では見かけないので、中休みの間はやや深いところで待機しているのではと思われます。
こちらは卵塊です。ヨドゼゼラそのものは1個体しか見つけられなかったものの、卵塊は各所に見られました。同じような卵塊が多数見られたので、おそらく水温が高いなど、条件のよかった日に集中して産卵したのでしょう。
しかし、誠に残念なことに、この湾処はオオクチバス天国でもあり、バスの稚魚、幼魚が多数見られました。バスの方が繁殖時期が早いので、孵化しても仔魚・稚魚の多くは喰われていると想像されます。
このような状態でも本種が生きながらえているのは、一斉産卵、一斉孵化することで、多少なりとも捕食を逃れるメカニズムを持っているからかもしれません。