ハリヨ

(トゲウオ科 イトヨ属)

Gasterosteus microcephalus Girard, 1854

ハリヨ(琵琶湖流入河川)

絶滅危惧ⅠA

巣穴の卵に水を送るハリヨ

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/180 Z-240×2(TTL)

琵琶湖流入河川 6月 水深30cm

 陸封イトヨが起源の淡水魚で、ミナミトミヨが絶滅してしまった現在、世界で最も南部に分布するトゲウオ類です。三重県では絶滅してしまったため、現在は滋賀県と岐阜県にしか分布しません。滋賀県産と岐阜県産では前者がより大型になるなど、かなりの差異が認められるとのことです。

 トゲウオ類は北方起源種であり、暖かい地方では湧き水のある場所にしか棲めません。このため、南日本では遺存種と考えられます。それだけに、湧水環境の維持が本種にとっては必須となります。

 写真の雄は婚姻色が濃厚で、孵化が近いのか、あまり巣穴から離れず、胸びれを使って懸命に水を送り続けていました。孵化が近づくと、オスはほとんど巣穴から離れず、休まずに胸びれを使って水を送り続けます。当初は魚眼+テレコンで寄ってみたのですが、さすがに大きくは写せなかったので、マクロに切り替えて撮影しました。

 ハリヨはフラッシュは気にせず、こちらがじっとしてさえいればあまり警戒しないので、撮影自体は難しくありません。ただ、「ジグザグダンス」といわれる求愛行動はかなり素早く、ピントと構図をいっぺんに決めるのは非常に難しいです。

 残念ながらこの生息地には、オオクチバスが侵入していました。オオクチバスのいる場所では、幼魚を見ることはありませんでした。ただし、オオクチバスは親魚は喰わないようで、突進していってもハリヨと分かると反転します。棘が痛い、と学習しているのでしょう。しかし、幼魚は食われている可能性があります。


ハリヨの繁殖行動を記録しました。ただし、産卵までは確認しておりません。(いずれも6月に琵琶湖流入河川にて撮影。オリンパスE-3+ZD50/2マクロ) 

ハリヨ2-1(琵琶湖流入河川)

1.巣材を運ぶ雄

 雄は藻や枯れ枝などを運んで巣作りをします。この状態では婚姻色はあまり出ていません。

ハリヨ2-2(琵琶湖流入河川)

2.巣作りをする雄

 腎臓から出る粘液をこすりつけ、巣を固めています。この時は体を小刻みに震わせています。

ハリヨ2-3(琵琶湖流入河川)

3.縄張りへの侵入者を追い払う雄

 縄張りをつくると、侵入してきた雄を追い払います。雄だけでなく、卵を持たない雌も追い払います。

ハリヨ2-4(琵琶湖流入河川)

4.トウヨシノボリを威嚇する雄

 縄張り内にトウヨシノボリが巣穴を持っていました(おそらく卵を守っている)が、これをたびたび威嚇していました。

 この他、カワムツアユ、アメリカザリガニなども追い払っているのが観察されました。

ハリヨ2-5(琵琶湖流入河川)

5.求愛する雄

 縄張り内に卵を持った雌が入ってくると、雄は接近し、中層で雌と互いに絡みつくように泳ぎます。

 動きが早いので撮影には苦労しました。

ハリヨ2-6(琵琶湖流入河川)

6.求愛を受け入れた雌

 雌は求愛を受け入れると、中層~表層に定位し、動きません。その際は、背を反らして腹を突き出すような体勢をとります。恍惚としているようにも見えます。

 雄は何度か雌を誘い、巣穴へと誘導します。観察した限りでは、3-4回くらいは誘うようですが、雌の方から巣穴に接近していくこともありました。

ハリヨ2-7(琵琶湖流入河川)

7.巣穴に誘導する雄

 雄は巣穴の入口まで雌を誘導します。

ハリヨ2-8(琵琶湖流入河川)

8.巣穴の位置を示す雄

 雄は横に寝て、巣穴の位置を雌に知らせます。しかし、巣穴に入らず逃げてしまうことも多いようです。

ハリヨ2-9(琵琶湖流入河川)

9.巣穴に入る雌

 雌は雄の誘導に従い、巣穴に入りました。雄は興奮しているのか、すべての棘を立てています。

 下の棘を立てると、赤色をしているのが分かります。

 しかし、巣の入口が小さかったのか、雌は全身を中に入れることができず、跳ぶように泳ぎ去ってしまいました。

ハリヨ2-10(琵琶湖流入河川)

10.巣穴をくぐる雄

 この後雄は、「おかしいな~」といった表情で、自分で巣穴をくぐったりしていました。巣穴を拡張する意味もあるのかもしれません。

 結局産卵を見ることは叶いませんでした。

ハリヨ2-12(琵琶湖流入河川)

12.幼魚の群れ

 幼魚や雌は群れています。表層にいることも多いですが、警戒すると深い場所に逃げます。

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