ハス

(コイ科 ハス属)

Opsariichthys uncirostris (Temminck & Schlegel, 1846)

ハス(琵琶湖)

絶滅危惧II

1.ハスの雌雄

オリンパスE-3 ZD12-60(37)/2.8-4 f6.7 1/180 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1.5m

 ハスは我が国のコイ科魚類では唯一の魚食魚とされ(実際にはウケクチウグイも魚食魚と思われる)、本来は琵琶湖・淀川水系と三方五湖のみ棲息します。現在はコアユの種苗に混じって各地に移植されてしまい、九州から関東まで幅広く棲息します。

 7月頃は繁殖期で、様々な配偶行動を見ることができます。流入河川に遡上して繁殖を行うものもいますが、湖内でも行われます。ここでは湖内での配偶行動を記録しました。産卵水深は1-4mでした。

 この写真では手前が雄で、奥にいるのが雌です。雄にはオイカワと似た婚姻色が出ますが、オイカワでは赤くなる部分はハスでは橙色っぽくなります。

ハス2(琵琶湖)

2.他の雄を追い払う雄

オリンパスE-3 ZD12-60(37)/2.8-4 f6.7 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1.5m

 繁殖を行おうとするハスの雄は、産卵床として適切な場所(藻に覆われていない礫底)のうちでもさらに藻のない地点を中心に旋回しているようです。一度産卵が行われた地点では、同じ地点で何度も産卵が行われますので、これを縄張りと呼んで差し支えないと思われます。雄は縄張りの中に雌を誘い混み、何度も放精します(これは尾びれの一部が欠けた同じ個体を観察することにより確認しました。)

 さて、この縄張りに入ってきた他の雄は追い払われます。追い払いには二つパターンがあって、水平方向への追い払いと、垂直方向への追い払いです。これは水平方向への追い払いです。ハスは遊泳力があるため、非常に高速です。だいたいにピントを合わせておいて置きピンにしておき、シャッタを切っています。ごく浅い場所に向かって突進していく様子も多く確認できましたが、これが何を意味しているのかは分かりません(特に捕食している様子は観察していません。)。

ハス3(琵琶湖)

3.垂直方向への追い払い

オリンパスE-3 ZD12-60(26)/2.8-4 f6.7 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1.5m

 追い払いは水平方向の場合が多いのですが、浅い場所(水深1m程度の場所)では上に向かって追い払うこともよく観察されました。垂直方向には逃げ場がないので、浅い場所では特に有効な追い払いと考えられます。これも非常に高速です。

ハス4(琵琶湖)

4.回転闘争

オリンパスE-3 ZD12-60(37)/2.8-4 f6.7 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1.5m

 大きさが拮抗する場合は回転闘争が起きることがあります。ヒレを全開にして、旋回しながら上昇しますが、これは一瞬です。

 なお、並行遊泳は観察されませんでした。河川のような流水環境ではないからかもしれません。

ハス5(琵琶湖)

5.雌を誘導する雄

オリンパスE-3 ZD12-60(36)/2.8-4 f6.7 1/180 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1.5m

 雄は縄張り上を大きく旋回しながら他の雄を追い払いつつ、次第に旋回の範囲を狭めていきます。旋回の範囲を狭めるうちに、雌を誘います。雌は複数付いてきますが、産卵に参加するのは1匹のみです。

ハス6(琵琶湖)

6.雌雄の旋回

オリンパスE-3 ZD12-60(37)/2.8-4 f8 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深3m

 雌雄が水底付近に降りてきて旋回の範囲が狭まると、そこが産卵地点になります。上述のように、この場所は何度も産卵に使われます。

ハス7(琵琶湖)

7.産卵

オリンパスE-3 ZD12-60(36)/2.8-4 f8 1/180 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1m

 産卵の瞬間です。雄は少し体を斜めに倒し、雌を礫底に押しつけるようにします。ヒレは全開となり、少し口を開けて体を震わせます。砂が舞い上がり、産卵、放精がなされると、どっとニゴイウグイビワヒガイが礫に頭を突っ込んで卵を食います。彼らは産卵を予測して、既に周囲に多数集まってきています。

ハスは卵を食われるのは全く気にしません。再び上方で旋回を始め、他の雄を追い払い始めます。ニゴイなどが卵を食べまくるとその周囲の礫からは藻が剥ぎ取られるため、産卵床として適切な場所になるものと考えられます。

最初のうちはハスも遠巻きになります.が、じっとして馴らせば目の前で産卵します。ただ、川と違って流れがないため、どの方向を向いて産卵するのかは予測が付かず、横向きで産卵するのを撮影するにはやや手こずりました。

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