イサザ

(ハゼ科 ウキゴリ属)

Gymnogobius isazas (Tanaka, 1916)

イサザ(琵琶湖)

絶滅危惧IA

卵を守るイサザ

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/60 Z-240(TTL)×2

琵琶湖 5月 水深2.5m

 琵琶湖の固有種で、ウキゴリ類が琵琶湖の環境に適応して進化した種とされています。

 琵琶湖では重要な水産種で、かつては年間400-500tもの漁獲量があり、イサザ豆、すき焼きといった独自の調理が発達しています。個体数の変動は元々激しく、昭和30年代前半や、平成5-7年は全くといっていいほど漁獲されていません。全体的な傾向としては昭和末期頃に激減しており、オオクチバス拡散やヌマチチブ侵入の時期と重なります。また温暖化の影響か暖冬が増えたことにより、冬期における表層と深層の水交換が滞り、イサザの棲む深層に酸素が行き届かないことの影響も指摘されています(亜熱帯や熱帯では湖の底層はまず無酸素状態です。これは密度流による水交換が起きないためです)。雪が減り、酸素を含んだ雪解け水が底層に供給されないことも影響しているかもしれません。平成10年以降は年間漁獲量100tを超えたことはなく、平成21年度はわずか3tとなっています。

 本種は普段は深所に棲息するため、浅場で撮影しようとすると産卵のために接岸する時期に狙うしかありません。撮影した日は大雨の後で水位がかなり上昇しており、水深2.5mまで潜降してやっと発見しました。写真のように8cmほどの2匹が卵を守っていました。石の裏はきれいに掃除され、石の中央部に白~半透明の卵塊が径5cm程度に生み付けてありました。発眼していないこと、2匹が守っていることから、産卵して間もないと思われます。雌雄とも婚姻色で腹が黄色くなっています(ウキゴリ属は通常雌に婚姻色が出ます。)。深層では浮遊しているとされる本種ですが、接岸した時は石の下に隠れているようで、浮遊している姿は見られませんでした。

 イサザは他の魚が卵を食いに来ないよう、出入り口を小さくしていますが、移入種のヌマチチブが同所的に棲息しており、彼らも石の下を掘る能力があるため、卵を食われている可能性はありそうです。また、この時期はまだオオクチバスもブルーギルも浅い場所では見られませんでしたが、孵化した後に仔稚魚が食われている可能性があります。

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