カネヒラ

(コイ科 タナゴ属)

Acheilognathus rhombeus (Temminck and Schlegel, 1846)

カネヒラ(長良川)

貝覗きをするカネヒラの雌雄 (撮影地では移入種)

オリンパスE-3 ZD35/3.5マクロ f8 1/250 Z-240×2(TTL)

長良川 10月 水深40cm

 在来種では最も大型となるタナゴで、婚姻色も華やかです。在来タナゴ類の中で、絶滅危惧種になっていないのは本種のみです。本種は大型で婚姻色も美しいため、放流する人もいるとのことですが、このような行いは厳に慎まなければなりません。

 文献によっては本種の分布域は濃尾平野~九州北部とされていますが、長良川や木曽川に関する過去の文献からは元々分布しているか疑問です。丹羽彌先生の『木曽川の魚』(大衆書房,1967)では本種は掲載されていませんし、駒田格知先生の『長良川の魚』(大衆書房,1987)では過去10年の調査で1回捕獲された(2匹)のみで、琵琶湖のアユ種苗による移入の可能性が高いとされています。

 さて、本種も他のタナゴ類同様警戒心が強く、入水して1時間ほど経ってやっと出てきました。繁殖期なので雄には婚姻色が出て、雌は産卵管が3cmほど伸び、ヒレが黄色っぽくなっています。泳ぎは高速で、雌を雄が追いかける様子がよく観察されました。泳ぎ方はイタセンパラに似ていますが、イタセンパラのように底層ではなく、比較的中層を泳ぎます(カワムツと同じくらいの水深を移動し、浅い場所にも行きます。)。

 タナゴ類は雄が縄張りを持ち、雌を誘い込んで産卵させる、とされていますが、水中で観察した限りでは縄張り行動は確認できませんでした。かなり広範囲を雌と一緒に泳ぎ回り、1対1になって元気のよい貝を選んでいるように見えます。

 高速で泳ぎ回っているため撮影のチャンスは少ないのですが、貝が多く埋まっている場所で貝を覗いて回る仕草を見せることがあり、このときはゆっくりしているので、それを捉えています。この「覗き回り」は雄単独のこともありましたが、雌とペアになって行うところが多く観察されました。写真はその様子です。貝は小型のものを選んでいるようでした。

 貝が埋まっているところでカメラを構えて待機し、「覗き回り」に来たら撮影する、というやり方で何度かチャンスを得ました。ヒレを開くことはあまりなく、雌への求愛のためにヒレをひらひらさせている状態が多かったです。産卵の確たる瞬間は確認できませんでしたが、それらしい行動は見られました。

 野生個体の産卵には様々なパターンがあるように思えます。

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