太平洋イトヨ(淡水型)

(トゲウオ科 イトヨ属)

Gasterosteus aculeatus sp.1

太平洋イトヨ(淡水型)1(大野市の湧水池)

絶滅のおそれのある地域個体群 

あくびをする太平洋イトヨ(淡水型)

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/90 Z-240×2(TTL)

大野市の湧水池 4月 水深40cm

 これまで「イトヨ」とされてきた魚は、①太平洋イトヨと②ニホンイトヨの2種に大きく分けられ、①イトヨ太平洋型はさらに下のように区分されています。しかし、この分類については定説を見るに至っておりません。

①太平洋イトヨ

 a.淡水型(陸封型):福島県以南では会津、那須、大野の湧水池にしかいない

 b.遡河型(海産型)

 c.ハリヨ

②ニホンイトヨ(日本海イトヨ:遡河型のみ)

 この一連の写真は福井県大野市の湧水池の個体を撮影したものです。大野は山に囲まれた盆地で、日本海側に位置するため、雪解け水が地下水を涵養し、各所で湧水が湧き出ています。かつてはイトヨが棲息する湧水池が各所にありましたが、水位低下、埋立、管理放棄などにより生息地が失われ、現在ではイトヨが棲む湧水は局限されています。かつては透き通るような湧水の池だった場所も、現在はただの沼にしか見えないような所もあります。個体群を維持していくためには、生息地の復元も重要と思われます。

 大野は日本海側ですが、ここに住むイトヨは太平洋型に属します。上記分類に記載のとおり、ニホンイトヨは遡河型(海産型)のみで、淡水(陸封)個体群はありません。

 ハリヨは太平洋イトヨ(淡水型)とは亜種の関係にあるとされますが、比較的大きな遺伝的分化が認められます。形態的にもハリヨは体側の鱗板列は胸部にのみ通常5~7枚存在しますが、太平洋イトヨ(淡水型)では体側に一列に32~35枚、尾柄まで少し重なるように並んでいるという違いがあります。実用的には、イトヨは側面がすっきりしており、ハリヨは体側に目玉のような模様があります。

 現在、地元では昭和40年代の水環境を取り戻すべく、

 ・地下水位の上昇に向けたハード施策

 ・地下水保全意識の醸成に向けたソフト施策

 ・文化・伝統の継承と湧水活用の推進

などが検討されております。生息の記録が残っている場所に関しては、生息地の復元と移植により危険分散するなど、具体的な対応が進み始めています。

 本種はハリヨよりも警戒心は強い気がしますが、じわじわと寄れば接近できます。

 写真はあくびをしている雄です。腹側の棘が赤いことが分かります

太平洋イトヨ(淡水型)2(大野市の湧水池)"

求愛のジグザグダンス

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/90 Z-240×2(TTL)

大野市の湧水池 4月 水深30cm

 腹の大きな雌が腹を突き出して定位している状態だと、必ず雄がやってきて求愛します。こういう雌を探し出し、ピントを合わせて待ち伏せます。

 ジグザグダンスは結構素早い動きなので、雌雄にピントを合わせるのはなかなか大変です。雄は雌に求愛する際には体色が銀白色に輝くように見えます

太平洋イトヨ(淡水型)3(大野市の湧水池)

ファンニングしている雄

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/90 Z-240×2(TTL)

大野市の湧水池 4月 水深40cm

 巣の中の卵に水を送っている雄です。巣を守っているので、接近しても簡単には逃げません

太平洋イトヨ(淡水型)4(大野市の湧水池)

オリンパスE-3 ZD50/2マクロ f8 1/90 Z-240×2(TTL)

大野市の湧水池 4月 水深40cm

 この卵は巣穴からはみ出してしまっています。まだ発眼していないようです。

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