コイ在来型

(コイ科 コイ属)

Cyprinus carpio (Linnaeus, 1758)

コイ在来型(琵琶湖)

絶滅のおそれのある地域個体群

コイ在来型

オリンパスE-3 ZD12-60(12)/2.8-4 f8 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深50cm

 コイは日本在来の魚だと思っている人も多いと思いますが、我々がよく見かけるコイは実はまず外来種(又は在来種との交雑)です。

 日本には在来のコイもいますが、コイ外来種の侵入により交雑が進み、いまや純系の在来コイは琵琶湖、霞ヶ浦、児島湾、四万十川など大規模水塊に限定的に残存するのみとされています。このことが判明したのは比較的最近のことです。2003年頃からコイヘルペスによるコイの斃死が問題となりましたが、この際の調査により、在来コイと外来コイがいることが明らかになりました。在来型と外来型は研究が進めば別種となるほど遺伝的には違いがあるとされています。

 我々がよく見かけるコイ(色ゴイでなく黒っぽいもの)は、明治時代以降に欧州、中国、台湾、インドネシアなどから輸入された外来種で、漁師や釣り人の間では両者の性質が異なることはよく知られていました。外来ゴイは養殖化が進んでいるため、警戒心が薄い一方、在来ゴイは極めて警戒心が強いとされています。都市の河川で浅場を泳いでいるコイを見かけますが、在来ゴイならこのようなことはまずあり得ないでしょう。

 コイ在来型は、長期間飼育しても警戒心は強いとのことです。ある程度は慣れるので、人が飼育池を覗き込むと一斉に口を開けて近づいてはくるのですが、餌をあげないと、1分ほどで陰に隠れて出てこなくなります(滋賀県水産試験場私信)。深くて広い琵琶湖では、こうした警戒心の強さにより外来型と棲み分け、交雑を免れてきたのかもしれません。

 ところでこの外来コイ(色ゴイでなく黒っぽいもの)は「ヤマトゴイ」と在来種っぽい名前で呼ばれているため、余計ややこしいことになっています。ちなみにこの「ヤマト」は、金魚の産地としても有名な奈良県の大和郡山市に由来するようです。

 各地で河川や湖沼に放流されたのはほぼ例外なくこの外来コイで、せっせと外来魚を放流していたわけです。ハリヨを保全してある池にわざわざこの「ヤマトゴイ」が放流されているのを見た時には本当にがっかりしたものです。コイは外来種であるばかりでなく、交雑や他種の混入など様々な問題があるため、放流は厳に慎むべきです。

 外見上、在来型は外来型に比べ、①体高が低い、②断面が丸っこい(外来型は側扁)、③頭長が短い、④ひれが短い、⑤背びれが前方に位置する、⑥眼径が大きい、⑦尾柄部が細い、⑧尾柄部が急に尻すぼみとならない、⑨背びれ軟条数が多い(19-23。外来型は16-22)、⑩尾びれの先端が尖っている、⑪体色は金色を帯び、⑫側線鱗数が少ない、等の相違があるとされます(古川優『鯉の品種に関する研究(第3報)』滋賀県水産試験場研究報告第4号 昭和28年 など)。実用的には、丸太のように丸くて長いのがコイ在来型です。

 ノゴイ・マゴイ(コイ在来型)とヤマトゴイ(コイ外来型)との体型の違いは、東京都島しょ農林水産総合センターの下記HPに図解されております。

 http://www.ifarc.metro.tokyo.jp/27,931,55,225.html

 滋賀県水産試験場のHPには両者の比較写真があります。

 http://www.pref.shiga.lg.jp/g/suisan-s/magoi/magoi.html

 さて、この写真は夜間に北岸の礫底で撮影したもので、在来型と思われる個体です。琵琶湖では普段はかなり深い場所に生息している在来型ですが、5-7月頃には接岸し、この時期、この辺りでは浅場でもかなりの割合が在来型とされています。

 フラッシュを焚いたとたん反転して闇に消えました。在来型と思われる個体が撮影できたのはこの時のみです。

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