九州北部にのみ棲息するタビラ類で、流れのある場所を好むとされています。
本種の雄の婚姻色はシロヒレタビラに似ているとされていますが、実際に水中で見ると尻ビレの端は白くなるものの、背ビレの端は明確に赤く染まっており、あまり似ている気はしません。またタビラ類に共通しますが、腹ビレの前部に明瞭な白線が出ます。
中には上の写真のようにヤリタナゴのような個体もおり、水槽で見るものとはかなり印象が異なります。
典型的な雄の婚姻色です。この写真のようにやや緑っぽい個体が多く、シロヒレタビラの青っぽい体色とは異なります。
ところで驚いたのは、「お前、カネヒラだろ!」と突っ込みたくなるような大きな個体がいたことです。図鑑など文献ではセボシタビラは全長8cm程度とされているものがほとんどですが、明らかにそれよりも一回り大きい雄がいるのです。目視したところでは全長13cm程度はありそうでした。このような大型個体は少なくとも2個体見かけました。これらは婚姻色も見事でした。撮影したかったのですが、条件のいい(つまり撮影しにくい)場所に陣取っており、結局撮影できませんでした。後述するようにこの場所には二枚貝が見あたらず、繁殖しないまま年を経て大型化したのかもしれません。
本種は警戒心が強く、開けた場所へは決して出てこようとしません。雄、雌ともに縄張りがあるようで、水草や木の枝などの表面に付着した藻類を食べているようです。物陰から出てくるのは他の個体が侵入してきたときに追い払ったり、追い払われたりするときのみでした。この場所は二枚貝が見あたらず、繁殖のための縄張りは形成されていませんでした。
雄は婚姻色が出ており、雌も産卵管が伸びている個体がいましたが、雄は他の雄のみならず雌をも追い払っていました。追い払いには突進して追い払う場合と、ヒレを開き、横からにじり寄って追い払う(近づかないようブロックしているように見える)場合とがありました。
表に出てきたときの動きは俊敏で、ゆったりと定位していることはなく、他個体を追い払ったらすぐに物陰に戻ってしまいます。特に雄はその傾向が強く、撮影には苦労させられました。