ビワコオオナマズ

(ナマズ科 ナマズ属)

Silurus biwaensis Tomoda, 1961

ビワコオオナマズ1(琵琶湖)

ビワコオオナマズ

オリンパスE-3 ZD12-60(12)/2.8-4 f8 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1m

 古くより漁師の間では、琵琶湖には3種のナマズがいるとされていましたが、学問的にはこれらは長らく同一種(ナマズ)とされていました。「東京からござった偉い先生が、これは同じナマズじゃいうて、どうにも譲らっしゃらんのじゃ。」と当時の漁師は不満を述べています(友田淑郎『琵琶湖とナマズ』汐文社,1978)。ちなみにこの「偉い先生」というのは田中茂穂博士のことです。その後の友田淑郎先生の研究により、昭和36年にビワコオオナマズとイワトコナマズが新種記載されました。

 本種は中層の網にかかることから、沖合を泳ぎ回っているとされてきましたが、昭和48年に湖底遺跡の調査が行われた際に、ダイバーが湖底からそびえ立つ大岩に棲み着いている本種とイワトコナマズを多数見かけています。昼間はそうした隠れ家に潜み、夜になると付近に集まっている小魚を食うのでしょう。網にかかったものを生け簀に入れたらコアユを一升吐いた、といった話もあるようです(同書)。かつては本種を専門に獲る漁もあったそうですが、本種にはサメ同様の独特の臭みがあって商品価値が乏しく、昭和30年代までに廃れたとのことです。

  22時頃現地に到着し、湖を見ると確かに1m級の個体が接岸し、産卵しています。台風が通過して間もないため、風が強く、湖岸は波うっています。ナマズの類は光を嫌うので、水中灯には赤色フィルタを噛ませ、光量を最大にしました。水中に入るとさっそくオオナマズが見つかりますが、うねりで体が安定できず、ピント合わせができません。それに赤色光ではファインダが暗く、ナマズがどこにいるか分かりません。幸いオオナマズは底から少し浮いた状態でゆっくりと泳ぐので、とりあえず広角側でノン・ファインダ撮影しました。写真の個体は1mほどあるもので、側のフナ類と比べてもその大きさがお分かりいただけると思います。

ビワコオオナマズ産卵1

ビワコオオナマズの産卵前行動

オリンパスE-3 ZD12-60(12)/2.8-4 f8 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1m

 ただでさえナマズ類は水中撮影が難しい魚なので、観察を続けながら戦略を練ります。とりあえず浮力が付いてピント合わせの邪魔になるウェットスーツは脱ぐことにしました。これでカメラを安定させます。

 次は光ですが、巻き付いたら白色光でも逃げないだろうと考え、赤色光でペアを捜し、巻き付いたら白色光に切り替えて撮影することとしました。。

 水中で観察していると、オオナマズはペア又は3匹(雌1匹に雄2匹)で周りながら巻き付くように泳ぎ、ペアが成立すれば産卵に至ります。ペア成立までに白色光を当ててしまうと逃げてしまいます。赤色光のまま追い、雄が雌の下部に位置すると巻き付く予兆です。雄は下側から雌の体に尾を巻き付けていきます。こうなったら赤色フィルタを外し、構図を整え、シャッタを切ります。ただし、フラッシュを焚くと雌雄は離れてしまいます。

 巻き付いている時間は20秒程度なので、産卵を邪魔しないようある程度時間が経過してからシャッタを切りました。

ビワコオオナマズ産卵2

ビワコオオナマズの産卵

オリンパスE-3 ZD12-60(12)/2.8-4 f8 1/250 Z-240×2(TTL)

琵琶湖 7月 水深1m

 雄が離れた瞬間に中層で産卵します。卵は一粒一粒ばらけた状態で、ゆっくりと沈降していきました。ハスの産卵のように他の魚が待機していて産卵と同時に群がってくる、という状況は見られませんでした。ただし、産卵場所で大型のコイが底を盛んについばんでいるのを確認しました。小型ながら腹が大きくふくれたギギも目撃しましたので、これらはオオナマズの卵を食っていると思われます

 ニゴロブナニゴイビワヒガイブルーギルもいましたが、彼らは寝ているのか卵を食っている様子は観察できませんでした。

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