カジカ類は外見での判別が困難なこともあり、区分については研究途上ですが、大卵型、中卵型、小卵型は別種であることがおおむね判明しているようです。小卵型のうちウツセミカジカ(琵琶湖とその周辺にいる湖沼型)は地域個体群レベルの差異であるとする意見、亜種レベルとする意見があり、定説を見ておりません。
① カジカ大卵型:胸びれの鰭条数12-14;中央値13 太平洋側、内陸に分布
② カジカ中卵型:胸びれの鰭条数14-16;中央値15 日本海側、瀬戸内海流入河川に分布
③ カジカ小卵型:胸びれの鰭条数14-18;中央値16 太平洋側に分布
③' ウツセミカジカ:小卵型の地域個体群又は亜種。 胸びれの鰭条数14-18 琵琶湖とその流入河川に分布
中卵型は主に日本海側に分布するとされてきましたが、近年、瀬戸内海側にいる両側回遊型カジカも中卵型と扱われるようになってきました。さらに、本種は陸封もされるらしく、大卵型と考えられてきたものも実は中卵型の陸封型ではないか、との見解もあるようです。
撮影地にはカンキョウカジカもいましたが、①カンキョウカジカはより下流に、②カンキョウカジカはより流れの早い瀬にいて、ある程度本種と棲み分けているように思われます。本種は流れの緩い平瀬にも見られます(平瀬ではカンキョウカジカはほとんど見あたらない)。
富山県ではカンキョウカジカよりも分布が狭いようで、カジカ中卵型のいる河川は限られています。浮石の下におり、石をはぐったらすぐに逃げてしまいます。このため、石を持ち上げて撮影しています。
太田川は意外にもカジカが多い川で、いる場所には普通種のヌマチチブやトウヨシノボリと同じくらい多くの個体が見られます。これだけカジカがいるということは河川の自然度が高いということでしょう。ひょっとすると琵琶湖からの稚アユの種苗に混じって入ってきたウツセミカジカか、とも考えましたが、過去10年に同じ地点で撮影したカジカのうち、確実に胸びれの軟条数を数えられるものを写真で判定した結果、15の個体が最も多く、残りは14であり、中卵型と考えるのが妥当と思われます。
このカジカは基本的に両側型です(一部陸封された個体群も知られる)。太田川には大芝水門、祇園水門が下流域にありますが、大芝水門は通常時ゲート全開で操作しているので、海との行き来には支障がないようです。
太田川上流(どう考えても両側型がいるとは思えないほど上流)で撮影したカジカの胸びれ軟条は、今のところ14ばかりで、中卵型の陸封個体群なのか、大卵型なのか判然としません。
なお、カジカはアユカケと違って石の下におり、さっさと逃げます。